スター
確かに、
この病について、わかってほしいという気持ちはある。
でも、もう、わからない人に無理にわかってもらおうとも思わない。
私の、、私のこの世で1番大切な人が
ちゃんとわかってくれているから。
むしろ、この病の重さをわかってしまったら、
その人がどうにかなってしまうかもしれないくらい辛い病だから。
もうこれ以上、望まない。期待もしない。
ここ最近は起きることもツラい。体調の悪い日が続いている。完全にリバウンドしたみたいだ。
私は認めたくない一心で、病院にも行かず、減薬を続けているがそうもいかないらしい。
真っ先に母がそのことに気づいて、忙しい中仕事を休んで病院に連れていってくれた。残念ながらその日は主治医不在で受診しなかったけれど、1日一緒にいてくれて、本当に心が救われた。たぶん、寂しい気持ちと、うつ病の治療に対する焦りの気持ちが原因といったところだろうか。母から言われた。それは明らかに鬱の人が陥りやすいリバウンドの症状。病気とうまく付き合っていくには、ひどくなる前に気づいて処置しなくちゃね。
本当にいい人だ。
しかし追い討ちをかけるように、苛立つ身内がとても目についてしかたない。身内でさえ理解が乏しいこの病。これまで、心ない言葉を浴びせられたりもした。だから、症状だけが辛いわけじゃない。
でも、その状況に置かれた私を見守ることしかできない母はもっと辛いと思う。
私は何年か前にファストフード店でバイトをしていたことがある。本当にちょっとの期間だけども。
そこでは、すごいことを学んだと最近になって気付いた。というより、それが私の今の考え方そのものになった。
それは、
子どもはみんな"スター"
という言葉。
子どもにはスターのように
特別優しく接しなさいという教えだった。
こんなこと言ったら心の狭い人間だと思われるかもしれないが、私は子どもがとても苦手だ。小さい子相手に敬語を使うし気を遣う。(姪と甥は別。笑、天使です。)そんな私も昔は保育士さんに憧れた。人の面倒を見たり、人のために動くことが好きだった。そんな私の純粋に人を想う気持ちは、幾度となく裏切られ、世間ではただのお節介なのだとようやく気が付いた、16歳。そして憧れは今や皆無に等しい。
そんな私に、その店の人は、生意気だろうが意地悪だろうが、スターは特別に優しくしてあげること
と教えてくれた。
家の中では、私達家族に対する身内の意地悪な言動は止まらない。でも、その人たち相手に、こちらが感情的になることは賢くない選択だと経験上、知っていた。小さい頃、味わった。逆らえば、母親が責められた。殺意が芽生えるほどだった。だから、昔から言われたい放題、されたい放題、いじめられた。泣いてはいけない、弱みを見せるな。負けてはいけない。家族のために。小さい頃の私はそう自分に言い聞かせ、尋常じゃないストレスだったけれど、逆らえばどの道、強烈にバカを見るから逆らわずにいた。
度重なるストレスに対して、いつの間にか私は、私なりの心の防御策を身につけていた。
大人もスターだ。
そうして身内に関わらず苦手な人にも、スターという言葉でフタをした。何を言われようが、そうかもね。と否定せず、私の意見は言わない。いつも肯定的でイエスマン。イエスウーマンか。
無力な自分に地団駄踏んで、涙をボロボロこぼして、大事な家族とどこか遠くに逃げたい。そう思ったこともあったけど、そうもいかない状況だった。だからスターという言葉でフタすることで、適当にテキトーにおだててあしらえた。相手はご満悦。それからますます八方美人になって、人に好かれることも嫌われることもなく、人に自分の想いを話すことさえなくなって、弱みや腹の内をまったく見せない、きっと、不思議であざとくズルい人間になっていった。それが1番賢くて、誰も傷付けることのない防御策。人を嫌ったところで、結局自分が傷ついて、身を粉にしてまで人のことを考えてしまう。だから嫌いという感情にスターという言葉でフタをして、優しくした。それなら人も自分も傷付けることなく済むと思った。
現実問題、心ない言動というのはやっぱり心の何処かに残っていた。
そして、うつ病になり、ココロがいっぱいいっぱいだと知らされた。
ほんとは、一緒に住んでいる人にくらい
この病気を、私を理解してほしい。
でも、わかろうとしない人にわかってもらう必要があるのか。
大切な大切な、大切な家族が、母が、
私を理解してくれているから、それでいい。と言い聞かせる。
やっぱあなたはママがいなきゃダメなんだねぇ、赤ちゃんみたい。そんなの気にしなきゃいいんだよ。結局は弱いんだよ。海外へ行くの延期したの?やっぱそんなもんなんだねー。なんて絶望の淵に立っている人間に平然と言える人に、私の想いは一生かけてもわかるはずがないでしょう。。。その人は一生、スターだ。もうなにも望まない、望めない。
期待すれば、傷つくのは私。
だからって嫌えば、傷つくのは私。
傷つくことや、ストレスから逃れるために
スターには今後も優しくする他ない。
今の私に、それしか選択肢はない。
けど実はもう、割り切れてるのかもしれない。
世界一のスターは薄情であざとい私自身なのかもしれない。